エレベーター
どのくらい、階段を駆け上がっただろう一。


崩れたおじいさんの、腕。

今にもおじいさんが、中西さんが追い掛けてきそうで、少しでも離れたくて、わたしは息を切らしながら、なお、階段を上がる。


コツ…

コツ…

コツ…


また階段を降りてくる足音が近付き、わたしはギクリ、と足を止め、足音の方向を恐る恐る見た。


『あ…あぁ…』



片腕の崩れたさっきのおじいさんが、


さっきすれ違ったはずのおじいさんが、


階段を、降りて来た一。





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