エレベーター
『その娘のお父さん、正幸さんはね、いつもその娘が虐待されるの見て、そのオジちゃんとやらを憎んでたわよ。もちろん、お母さんもね。』



『見てた…?』



わたしの問いに、何を今更、と言うように中西さんは続ける。



『そりゃ見ようと思えば見られるわよ。眼球が残ってれば。』


『だって…』


めんどくさそうに、中西さんは続けた。


『ま、眼球すら無くなったら終わりだけど、サ。』




そして、もう一度笑った時、






ガコン一


わたしの目の前で、エレベーターが動き出した。




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