エレベーター
わたしは、もう一度その花束を見た。


名前は知らないが、黄色い花が風に揺れていた。


団地の入り口にある、たくさんの郵便受けの中から『702号室』のポストを覗いてみる。


『何もなし、と。』


きっとお母さんが買い物帰りにでも持って行ったんだろう。


わたしは少し錆びたポストをギイ、と締め、エレベーターに向かった。




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