エレベーター
わたしはサラサラと風に消えていく真由ちゃんのパパから、目を離せずにいた。


『真由。このお姉ちゃんと先に行ってなさい。』


真由ちゃんがどうして?と言うように真由ちゃんのパパを見た。


『本当?』


『ああ、本当だ。』


『後からちゃんと来る?』

『ちゃんと行くよ。』


『すぐ、来てくれる?』


『よし、すぐ行くよ。』



最後の父娘の会話に、わたしは涙ぐんだ一。


『じゃあ、先に行ってる!』


真由ちゃんが嬉しそうにわたしの手を握る。

わたしは涙をこっそり拭うと、真由ちゃんの手を握り返し、笑顔を見せた。
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