エレベーター
眼球が二つ、そこにあった。


暗闇の中、赤黒く光る二つの眼球一一一一。


それが中西さんのものだと、わたしにはわかっていた。




わたしはガクガクと奮えながら、わたしをじっと見据える眼球から目を離せずにいると、


〜♪…


その着信音が途切れ、


『美香ちゃん』


名前を呼ばれて、その丸い眼球がニヤリと笑ったような気がした。



一なんで?


一わたしは戻ってきたんじゃないの?



わたしは後ずさりしながら自分の部屋を出た。



一早く

一元の世界に戻らないと…


わたしは玄関を出て、よろよろと屋上に向かった。





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