すきの、チカラ
「あー、わりーわりー」
「もーいいけどぉ。そうだっ!!こないだ教えた曲、聴いたー?」
「おー!あれ、すっげーよかった!!ありがとな」
盛り上がっている話し声が、廊下まで、聞こえてくる。
「良かったぁ~。悠斗、絶対あのバンド、気にいると思ったんだぁ」
「ああいうの聴くと、バンドとかやってみてーと思うよな」
「きゃーっ!超かっこいいって!!最前列で見にいくからねっ!!」
「はは、気ぃはえーな」
遠野さんの細い手が、甘えるみたいに、葉山くんの腕をつかんだとき。
見ていられなくて、わたしは、走り出していた。
・・・かわいいと、かっこいい。
すごくお似合い。ばっちり、つりあってる。
きっとだれも、文句を言わない。言いようがない。
髪も、同じ色。ふわりと茶色がかった、きれいな色。
悠斗。わたしが呼んだことのない、葉山くんの下の名前。
・・・ふたりがしていたのは、バスケ以外の、話だった。