すきの、チカラ
・・・



「告ったもん勝ちだよねぇ~っ!!」

「あの子でOKなら、わたしでもいけたしっ!!」



学校の廊下。

通りすがりに、わざと大きな声で言われたセリフが、耳に入った。


あきらかに、わたしに対する、イヤミだ。


うう、と丸まったわたしの背中を、友達の晴香ちゃんが、ポンとたたいた。



「やっかみなんか気にすんなー!イオっ!!」



晴香ちゃんの明るい笑顔に、うん、とうなずく。


晴香ちゃんとは、同じバスケ部で、しかも同じクラスだから、1番仲がいい。



「見てるだけしかできなかったヤツが、文句言う資格なんてないよ」



怒ることができないわたしの代わりに、晴香ちゃんは、くちびるをとがらせて言った。



「他の誰よりも勇気出したのが、イオなんだから!!」



晴香ちゃんが言う、『イオ』は、わたしのあだ名だ。


イオリの、イオ。望月伊織。


自分で言うのも悲しいけど、全部が平凡すぎる、高校1年生。

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