すきの、チカラ
・・・



「望月!!」



部活終わり。

そわそわしながら、体育館の影で待っていると、葉山くんの声がした。


バッ!と、いきおいよく、顔を上げる。


葉山くんが、男バス部員たちの輪から1人抜けて、わたしの方に歩いてくるのが見えた。



「・・・おまたせ。帰ろっか」



ふ、と息をもらすように、葉山くんが、わたしに笑いかける。


この瞬間、わたしはいつも、うまく、息ができない。



「う、うんっ」



ドキドキしすぎて、空気を吐けないし、吸えない。


部活終わりに、待ち合わせして、一緒に帰ること。


・・・付き合ってから、もう何回も、繰り返しているのに。



「男子、今日、パス練習メインでさ」



並んで歩きながら、葉山くんが、話し出した。



「速く走りながら、相手とパスしあうヤツあんじゃん。あれ、けっこう好きなんだよな」

「へえ!!そうなんだ!?」



ひっくり返りそうな声で、返事をする。


葉山くんとの会話の始めは、緊張しているからか、大きなリアクションになりがちだ。



「おー。相手が来る位置を予想して、投げるだろ。ドンピシャで受け取ってくれると、すっげ、気持ちいい」


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