すきの、チカラ
シュ、と両手首をしならせ、パスをするマネをして、葉山くんが笑う。
かわいいなぁ、と、やっぱりかっこいいなぁ、が、同時に心に押し寄せる。
それから、思うんだ。
こうやって並んで歩けるなんて、あらためて、奇跡だよなぁって。
『よかったら、駅まで、一緒に帰らない?』
その提案は、わたしからした。
断られたらどうしようってこわかったけど、勇気をふりしぼった。
わたしと葉山くんは、クラスがちがうし、それに、同じバスケ部っていっても、練習は男女分かれていて、接点が少ない。
ヘタしたら、1回も話せない日が、あるかもしれないから。
心臓が落ち着かないまま、葉山くんのとなりを歩いていたら、駅が見えてきた。
高校から駅までは、歩いて、たったの10分だ。
ふたりでいられる時間は、あっという間に終わってしまう。
「今日のミニゲームで、フェイントかけられてさ。そんとき・・・」
たったの10分間。
葉山くんの話は、いつも、バスケのことばかり。