すきの、チカラ
・・・



「あー。やっぱ、目の保養ではあるよね」



女バスの、水分補給の休憩中。


ペットボトルを口からはなして、晴香ちゃんが言った。


晴香ちゃんが指さしたのは、向こう側の反面コート。


そこには、1on1真っ最中の、葉山くんがいた。


わたしにはあり得ないスピードで体をジグザグさせて、葉山くんは、はばかる相手を、一瞬で抜き去る。


・・・オフェンスでもディフェンスでも、目立つなぁ。


ぼうっと見とれていると、晴香ちゃんに、肩をこづかれた。



「あーんなかっこいいとこ見れて、同じバスケ部の特権だよねぇ。ねっ、葉山カノジョッ!!」

「や、やめてよ~・・・」



弱々しい声を返すと、晴香ちゃんは、オヤジみたいにウヒヒッと笑った。


晴香ちゃんの言うとおり、こんなにかっこいい葉山くんを見られるなんて、バスケ部の特権だと思う。



でもね。同時に、考えちゃうんだ。


わたし、葉山くんの、バスケ姿しか知らないなぁって。


帰りの短い時間も、ほとんどバスケの話しかしないもん。


そのことを、たまにすこし、不安に思う。



「・・・あ、そうだ」


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