すきの、チカラ
・・・



不安で眠れない、なんて、はじめてのことだった。

受験の前の日だって、ぐっすり眠れていたわたしなのに、今夜はぜんぜん寝つけなかった。


晴香ちゃんから聞いたことが、ぐるぐる、頭をまわっていた。



『なんか、葉山くんのこと好きらしいよ』



遠野さんは、葉山くんと同じクラス。3組の、女子だ。


すごくかわいい子。

まさに美少女ってかんじで、入学当初は、男子がこぞって連絡先を教えてもらいに並んだって、うわさ。


晴香ちゃんの口から、遠野さんの名前を聞いたとき。


正直、葉山くんとお似合いだって、思ってしまった。


そんな自分が、ショックだった。


自分に自信なんて、これっぽっちも持てていないんだ、わたし。


ずっと不安が消えなくて、だから、次の日の朝。


ある光景を見てしまったわたしは、頭が、真っ白になった。



「もーっ、悠斗ったらぁ!!」



3組の前を通りかかったとき、偶然、葉山くんと遠野さんが話しているのを、見つけてしまったんだ。


窓枠にもたれて、並んで立つふたりは、とても楽しそうに笑っていた。


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