君にドキドキする瞬間
「ヒャハハハ!」
腹を抱えて目の前で笑う大前君が鬱陶しい。
私の気持ちなんてサッパリ分かってないんだ、こいつは。
耳に障る大前君の笑い声を止めるべく、テーブルの上に置かれているお手拭きタオルを手に取ると、目の前の大きな口へと勢いよく突っ込んだ。
「うごっ……」
情けない声を出す大前君。
それをニヤッと笑って見つめるのは、少し楽しかったりする。
うん。大前君のこういう情けない姿は結構好き……かもしれない。
その後散々飲みまくってからその店を出たのは、日にちが変わる少し前。
居酒屋を出て、暗い道を二人で並んで歩く。
といっても、飲み過ぎたのか、私の足はふらふらだ。
目の前だって見えてるんだけど、たまーにゆらゆら揺れてたりする。
けど、気分は気持ち良いんだな、これが。
「中村、飲み過ぎじゃね?」
「飲まずにいられますかっての」
今日の一日を振り返ってみたら、飲むしかないでしょうよ!