君にドキドキする瞬間
「そんなにショックだったのか?」
私の顔を覗き込みながら不思議そうな顔をして首を傾げる。
そんな彼を見て思わず頬が熱くなった。
大前君をちょっと格好いいとか思ってしまった。
いや、大前君は格好いいんだけども……。
やっぱり、大前君が言う通り少し飲み過ぎなのかもしれない。
そんな気持ちを誤魔化す様に唇を尖らせて、
「一度は格好いい人から壁ドンされて、ドキドキしてみたかったっていう女の夢ってだけですよ」
そう不満を口にする。
漫画やドラマみたいな素敵な恋愛に憧れる。
胸キュンの定番と言われる程の壁ドンをされて、キュンキュンしてみたい。
なーんていう夢。
ハッキリ言って、23にもなってこんな事を言うのも恥ずかしいんだけどさ。
きっと、大前君はまた大笑いをするんだろう。
そう思っていたのに、顎に手を添えて考えるように、
「ドキドキねぇ」
そう言う大前君は予想外だ。