君にドキドキする瞬間



「中村?」



返事をしない私を不思議に思ったのか、大前君がこの体勢のまま私の顔を覗き込む。



あー、もう。


今日、3度目の壁ドンが大前君だなんて。


顔が、……凄く熱いし。


それに、凄く……



「ど、…ドキドキする」


「えっ!?」


「す、すっごいドキドキするんだけど……」



大前君が驚いた顔をしているのも分かっているんだけど。


3度目のこの体勢で初めてドキドキしたという事を無性に言いたくなってしまった……ってだけなんだけど。


ただそれだけだった筈なんだけど。


言ってからもっと顔が熱くなった気がする。



大前君はまた馬鹿にしたような顔をしてるんだろうな。



そう思って間近にある大前君の顔をしみじみと見ると、真っ赤に染まった顔をしていて、私を馬鹿にしている雰囲気など微塵もない。


しかも、ゆっくりと艶めく唇を動かして爆弾を落としてきたのだ。



「それはさ、中村が俺の事を好きだからだろ?違うの?」


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