君にドキドキする瞬間
「よいしょっと」
私の顔の真横に置かれていた手を腰へと移すと、ゆっくりとその掛け声と共に身体を元の位置に戻す原田課長。
ただ、その時に思い切り私の肩を壁へと押し付けたのは、仕方無い事なんだけどイラッとしてしまう。
きっと私は今、ひきつった笑いを原田課長に向けてると思う。
「歳をとると足元が覚束なくなるっていうのかな?」
この廊下には障害になるものなんて1つも置いてない。
って事は原田課長、……自分の足に、自分の足を引っ掛けたな……。
「ど、どうでしょうか?原田課長はまだまだお若く見えますし」
全然若くは見えないけど。
寧ろ、おじいさん位に見えるけど。はげ力のせいで。
それでも一応上司のご機嫌はとっておかなきゃならないものなのだ。
私の言葉ににんまりと笑う課長は明らかに嬉しそうで、
「おっ、そう!未来ちゃんから見ても、わしいけてる!?」
めちゃくちゃ調子こいてるし。