君にドキドキする瞬間



「えっ……、まぁ……」



もう私は口元がひくひくとひきつるのを抑えるのでやっとだ。


このおっさんのせいで。


なのに、ご機嫌になった原田課長は止まらない。



「じゃあ、未来ちゃんも今のでわしにメロメロかぁ。ほら、さっきのって俗に言う壁ドンってやつだしね!」


「…………」



親指を突き出してウインクをしてくる原田課長。


壁ドンって言葉は間違いなく今年20歳になったという娘さんから聞いたに違いない。


もうなんていうか……



心底うっざー!



「わしに惚れるなよ。なんせ妻も子もおるからなぁ」


「…………」



絶対に惚れねぇよ!


そんな突っ込みを入れたいのに、上司にそんな事を言えるわけもなく。


ハッハッハッ!とご機嫌に笑って去っていく原田課長の背中が酷く腹立だしい。


原田課長への苛立ちからキリキリと歯を噛み締めたその時、


「ヒャハハハハ!!ウケるお前!」


後ろから手を叩きながら大笑いしてやって来た男の声が耳に響いた。


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