君にドキドキする瞬間
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仕事終わりの電車の中はどこかほっとする。
しかも今日は運が良いのか席が空いていて座れるという。
私の隣には仕事終わりでも劣化しらずのイケメン男、大前君が座っている。
大前君と私は降りる駅も一緒。
そして共に酒好き。
だから自然と飲み友達になったんだと思う。
カタカタと揺れる電車のせいで、徐々に瞼が重くなってきたその時、不意に隣の大前君が席を立った。
「この席、どうぞ」
「ありがとうございます」
大前君の前に立っていたのは、仕事終わりだろう女の人。
でも、彼女が手に持っている鞄にはマタニティーマークのキーホルダーがついていた。
気付いてあげれる人が少ない位のその主張に気付いた大前君は流石だ。
これがスマートな対応というやつなのかもしれない。
そして、スッと私の前に立つ。
「代わろうか?」
そう言って私が席を立とうとすると、彼の手がガシッと私の頭を掴んで上から押す。
「中村は座っとけ」
そんな言葉と共に。
一応、こんな私でも女性扱いはされているらしい。