君にドキドキする瞬間
一駅過ぎると、一気に人が電車内に入ってきた。
混み合う車内の人に押されて、私の前にいた筈の大前君が少しズレる。
その代わりに私の前にやって来たのは腰の曲がったおじいさんだ。
さっきの大前君に影響されてか、私もスマートに席を代わってみせる!と思って席を立ち、
「あっ、この席どうぞ」
そう言った瞬間、
「ん?おっ、…うぎぁっ!!」
そのおじいさんの悲鳴と共にバンッと窓につかれるしわしわの両手。
そして、その手の間に挟まれた私。
これ、どういう状態?
ん?っていうかこれ、……壁ドンじゃね。
おじいさんのかさかさの唇が至近距離にあり過ぎて思わず顔を仰け反らせた。
『電車に乗ってきたおじいさん
攻撃力 3
防御力 5
よぼよぼ力 98
女子モテ力 0
しわ力 100』
人生初の壁ドンが原田課長で、2回目が電車に乗ってきたおじいさん。
私へと顔を向けたおじいさんが、バランスを崩して思い切り私の方へと倒れてきたという事は分かっていても、モヤモヤした気持ちは消えない。
寧ろ、かなりへこむんですが。