今宵、月下の夜に

車を走らせるマスター。遠ざかっていく現場をみながら口を開く。

「マスター。汐里は…愛沢の娘は幸せだったと思いますか」


さっきから汐里の顔が頭から離れない。

ペンライトで照らしたその顔はとても苦しそうに顔を歪めていた。


「それはわからない」

ただ一言言うマスターの顔はどこか寂しげだった。


「だが愛沢汐里は闇の中の犠牲者だ。少なくとも彼女を咎める者はいない。それに、そのことに関してはお前が一番よくわかってるはずだ」

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