君のココロの向こう側
「智也くん、今日誰がお迎え来るのー?」



智也くんはまだ話せないから答えはないけど。

今年度から入った智也くんのお迎えには、お母さんが来てるところしか見たことがない。



「だ!」

「んー?パパかなぁ?」

「だ、う」

「泣かずに待ってて偉いねー」



頭を撫でると、にこっと笑う智也くん。

そんなとき、再び園内にインターホンが響いた。



「あ、お迎え来たね。帰る支度しようね」



智也くんにパーカーを着せ、手提げ袋を確認する。



「よし」



智也くんを抱きかかえ、手提げを持って教室を出る。

門の近くに見えるシルエット、それは明らかに男の人のものだった。

その人は薄暗い中振り向いて、



「前田智也の迎えです」



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