君のココロの向こう側
隆太郎の口から飛び出した言葉に、どきりとする。

なんだ、やっぱりそうなんだ……。

内心胸を撫で下ろしていると、隆太郎が腰ポケットから鋏を取り出した。



「……俺が美容師になりたいって言ったときのこと、覚えてる?」

「……うん。覚えてるよ」



忘れる筈ない。

だけどどうして今そんなこと……。



「姉ちゃんの髪いじるのが昔から好き、そう言ったんだっけな俺」

「うん」

「その姉ちゃんの子供が、智也」

「……」



……え?



「えええええ⁉︎」



さらりと告げられた驚くべき事実に、思わず声が大きくなる。



「煩い」

「ご、ごめん……」



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