君のココロの向こう側
目の前のポテトに視線を落とす。

そう言えば隆太郎の夢とか……聞いたことなかったな。

と、沈んでいると。



「峰は?どうすんの?」

「わ、私?」

「うん。進学すんだろ?」

「うん……。一応、短大行こっかなって思ってるけど」



考えている地元の大学の名前と学科を伝えると、隆太郎は少し寂しそうに笑った。



今思えば、隆太郎はこのときからずっと考えていたんだと思う。

だけど、私のことを考えて言えなかったんだろうと。



隆太郎の夢を耳にしたのは、蝉の大合唱が響く真夏日だった。



「え?アイツって美容師になりたいんじゃなかったっけ?」



それも、本人からじゃなく隆太郎と仲の良かった男子から。

吃驚した。

そんなの、隆太郎の口から教えてもらったことなかったから。



< 34 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop