君のココロの向こう側
それと同時に気付いてしまったんだ。

地元に、美容学校がないことに。



「隆太郎、美容師になりたいって……本当?」



すぐに隆太郎を呼び出し、問い詰めた。

隆太郎はまるで豆鉄砲を食らったかのような顔をした後、気まずそうに笑って。



「誰かに聞いたの?」

「……平原君から」

「……アイツか」

「ねぇ、答えて」



あのときのえも言われぬ不安は、今でもよく覚えている。

心のどこかで、違うと隆太郎が否定してくれることを望んだことも。

だけど隆太郎は首を縦に振った。



「そうだよ。俺の夢は、美容師になること」



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