君のココロの向こう側
「……うん、そうするよ」



必死に取り繕った笑顔で隆太郎を騙した。

隆太郎のポケットで鳴るケータイに気付かないフリをして。





「それじゃあね」



玄関先で私が門に手をかけると、



「待って。まだキスしてない」



そういう気分じゃない、そう思って言わないでいたのに。



「……私今風邪気味で、伝染すと悪いから」

「大丈夫、んな簡単に伝染んねぇよ」

「……」

「ほら。峰」



手を広げて私を待つ隆太郎の胸にゆっくり飛び込む。

変わらない温かさにほっとした。



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