君のココロの向こう側
「なくないよ。私は今を大切にしたいのに、離ればなれの未来が見え隠れしてるの。不安ばっかり、大きくなる」

「……」

「佐伯にはそんな不安を聞いてもらってただけだよ」



私の言葉に、隆太郎は眉間の皺を深くする。



「その不安、俺には言えないのかよ」

「……」

「佐伯じゃなくて、直接俺に言えばいいだろ」



待って、



「なんで私がまた責められてるの」

「責めてない」

「だったらもう少し優しく言ってよ」



険悪な空気が漂う。

そうさせたのは、どっち?



「……隆太郎はもう、私のこと嫌いになった?」



震える声で漸く絞り出した言葉。

確かめるのが怖かった。

嫌い、なんて真正面から言われたら、立ち直れないかもしれない。

そんな恐怖がど真ん中にあったけど、今は確かめないことの方が怖いから。



「嫌い」

「……っ」

「って言ったらどうすんの?別れんの?」



私を試すかのような、そんな口振り。



< 62 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop