君のココロの向こう側
もう瑞穂には隠しごとなんて出来ないなぁ……、なんて考えながら、涙を拭った。





夜、私と瑞穂はいつもの居酒屋のカウンターで肩を並べていた。



「お兄さーん、焼酎おかわりー」

「はーい」



通常通り賑やかな店内で、1人だけ世界が違うみたい。



「ちょっと彩乃。ペース落としなさいよ」

「大丈夫だよー。明日休みだし」

「そういう問題じゃなくて……」



呑んだら、束の間だけ忘れられる気がしたの。

隆太郎の笑顔も、涙も。



「……ねぇ瑞穂」

「何ー?」

「どうして私は……あの人を嫌いになれないんだろう」



いっそ嫌いになれたら、楽なのに。

思い出せば思い出す程膨らむ想いは、消えることを知らなくて。



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