月と星とキミと
「……何をしてるの?」
声をかけたのはどっちだったんだろう。
気付いたら冷たくなったベンチに二人ならんで腰かけていた。
「月を見てるの」
「月?」
「満月だから」
彼の質問に答え、わたしも質問をした。
「それ、飲まないの?」
「温かいから」
「ぬるくならないの?」
「もうぬるいかな」
彼はとても不思議な人だった。
缶を大事そうに持って、開けようとはしなかった。
「あなたは学生なの?」
「……そうだね、…これは制服だから。
キミは?」
「わたしも同じ」
「そうか、何年生?」
「高校…二年生。
あなたは?」
「僕は高校三年生」
お互いのことを、少しずつ知っていく。
抽象的に、ふわふわと。