キスの意味
私は、無言で塚本さんから本を取り上げて、棚に戻す。

『昼下りの妻たち』なんてサブタイトルのついたレディースコミックだった。

「え~、残念」

「っ!一人の時に見てください!」

もう・・・今日の塚本さんは、なんかいつもとキャラが違う!

なんとなく視線を動かした私は、周りからチラチラと見られている事に、ようやく気付く。

ここは、レディース向けの雑誌が置かれているコーナーだ。

当然、周りは女の人ばかり。

私が小さな悲鳴を上げ、そこに塚本さんみたいな人がいたら・・・

気になるよね。それでなくても『気になる男』なのに。

私は、急に居たたまれなくなって俯くと、頭の上から塚本さんの、のんびりした声が降ってきた。

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