キスの意味
「うちのも、お願いできるかしら?」

すっかりこれも、お約束となった。

「はい」

ファイルを3冊渡される。

おっ、重い!・・・
平静を装いながら、丸岡さんに声をかける。

「資料室に行ってきます」

丸岡さんは、苦笑しながら頷く。

私も、少し肩を竦めた。

階段の少し手前で、またもや、外から帰ってきた塚本さんに会ってしまう。

タイミングが、いいと言うか、悪いと言うか・・・

「お疲れ様です」

一瞬、立ち止まりそうになったが、小さく頭を下げて、塚本さんの横を素早く通り抜ける。

「手伝うよ!」

案の定、私の背中に塚本さんの低い声が響く。

「大丈夫です!」

頭だけ後ろに捻って、塚本さんに答える。

これぐらい、忙しい塚本さんの手を煩わせるまでもない。

でも優しい塚本さんなら、こういう時、きっと放っておけないだろう。

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