キスの意味
目だけでクルリと辺りを見回し、通り過ぎる人が、チラチラとこちらを見ている事に気付いた。

また、やっちゃった・・・!

「行きます!」
歩き始めるけど、塚本さんも肩紐から手を離さないので、大きな塚本さんを、小さな私が引き連れて歩いているようだ。

「離してください」

「イヤだ」

「っ!逆に歩きにくいですから」

「じゃ、水野君がそれを下ろせば?」

そんなやり取りを繰り返していた時、

「おいっ!」

後ろから、低いよく通る声が響いた。

ん?私達・・・?

塚本さんと2人、何となく足を止め振り向く。

「しばらく会ってないと、尊敬する先輩の顔も忘れるのか?塚本」

スラリとした背の高い男の人が立っていた。

あれ?うちのユニフォーム・・・?

目深にかぶっていた野球帽を、パッととる。

朝の太陽を受けて、サラサラの髪が明るく光る。

きれいな二重瞼に、スッと通った鼻筋、薄く形のよい唇。

なんか、キラキラした人だ。

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