キスの意味
苛立ちと腹立ちを押さえながら、今度こそ、そこを立ち去ろうとする。

「これから、決勝戦がありますので」

振り向こうとした時、グッ!と右手首を掴まれる。

「っ!!」

眉根を寄せ掴まれた腕を見て、顔を上げる。

「じゃあさー、アドレス交換しよう。試合終わった後、連絡くれたら、俺、迎えに来るから!」

軽薄な笑いを浮かべているのに、手首を掴んでいる力は強く、簡単に振りほどけそうにない。

もう1人も、薄く笑いを浮かべている。おもしろがって私の反応を見ているようだ。

掴まれた手首から、じわじわと恐怖が広がっていくようで・・・

昼間のこんな運動公園で、何かされるはずない!・・・

“ 離して! ” 喉に張り付いてしまったその声を、なんとか外に押し出そうとした時

「沙映っ!」

聞き慣れた低い声が、鋭く響いた。

3人とも、ビクッ!となって動きが止まる。

私の手首も、ようやく離された。

そっと振り向くと、塚本さんが駆け寄ってきた。

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