キスの意味
私を、じっと見下ろしてくる塚本さんに、小首を傾げ「てへっ」と笑ってみた。

塚本さんは、スッと視線を逸らした後、ハァ~と、盛大に溜め息を吐いた。

「いくら昼間だとはいえ、どんな奴が来るかわからないコンビニの駐車場で、ロックもせずに、寝てた!?」

塚本さんは、逸らしていた視線を、私に合わせる。

「ケイタイの着信にも気付けないほど、熟睡していた!?ロックもせずに!?」

「う"っ・・・」

塚本さんらしくない、理路整然とした攻めに、何も言えない。

「水野君は、いつも隙がありすぎる。そんなだから、さっきみたいなのにも、絡まれる」

そう・・・なのかな・・・
手首を掴まれた時の恐怖とか、塚本さんを見た時の安心感とか、今、塚本さんに言われた事とか・・・

いろんな気持ちが、頭の中で渦巻いて、堪えていた涙が、また溢れそうになる。

塚本さんは少し眉根を寄せると、掴んでいた私の手首を離した。

「その顔は、よくないな」

右手の人差し指の背で、私の左頬を優しく撫で、いつの間にか溢れていた涙を拭いてくれた。

< 255 / 427 >

この作品をシェア

pagetop