キスの意味
野球大会の記念撮影が終わり、白石さんと名残惜しそうにお別れした野球中年達。

「来年のお世話係も、雪乃ちゃんだよ!」

なんて勝手な事を言っていた。一人ずつと握手をする事になり、白石さんのきれいな手を思い出して、情けなくなる。

拒否する理由もないので、白石さんと握手をしたら、その手は、柔らかく、温かかった。

たまたまなのか、狙ったのか、白石さんと最後に握手をしたのは塚本さんだった。

「塚本、長過ぎ!」と、みんなと同じくらいしか握手をしていなかったのに、お約束のようにからかわれていた。

白石さんの笑顔は、塚本さんと握手をしている時が、一番きれいに感じた。

自宅に戻り、軽くシャワーを浴び、着替えた。スッキリとしたら、だんだん気持ちが落ち着いてきた。

私が、普段白石さんと会う事もないのだし、塚本さんと白石さんが付き合っていようが、私には関係ない。

私はこれまで通り、同僚の一人として、接すればいい事だ。

気持ちが決まれば、何でこんな簡単な事を、グダグダと考えていたんだろうと思った。

「たくさん、食べなさい」

塚本さんの言葉に、我に返る。私がボーッとしている間に、食べ物がのったお皿が全部、私の前にきれいに並べられていた。

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