キスの意味
うん、いつもの塚本さん。塚本さんの様子にホッとする。

「だし巻き、食~べよ!」

私の前に並んでいた料理のお皿が、全体的に少しだけ塚本さんの方に移動している。

しばらくは、お料理を食べる事に集中しようか・・・あっ、でも塚本さんに、訊きたい事があったんだ。

「藤田さんって、今、彼女いないですよね?」

「・・・藤田さん?ああ、そう聞いてるけど・・・」

私を見て、首を少し傾げるようにして言う。

「いつ頃から、いないんでしょうね?」

「う~ん・・・どうだったかな・・・確か、俺が入社した夏ぐらいには、付き合っていた彼女と別れたって、聞いたと思う」

視線を上に動かしながら、ゆっくり思い出すように話す塚本さん。

塚本さんが入社って事は、同期の尚子さんも入社だよね。尚子さんが入社して、その後に彼女と別れているなんて、これって、ただの偶然?

「もしかして水野君、藤田さんの事、好き・・・」

「んな訳ないでしょっ!!」

塚本さんの信じられない言葉を、全部聞く前に否定する。
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