キスの意味
「久々に、からかい甲斐のある・・・じゃなくっておもしろい奴を見つけたと思った。ちん・・・沙映は、俺や塚本と話している時と、他の人と話している時、態度を変えないだろ?変えないどころか、不機嫌な顔で、言いたい事を言ってくる。おもしろかったよ。だから、つい、調子にのって、言い過ぎた。すみませんでした!」

藤田さんはもう一度、頭を下げた。

そういえば、前に丸岡さんにも言われた事がある。

「塚本君と話してて、“ モジモジ ”も“ クネクネ ”もしてない女の子、久々に見たかも」

その時は「そうなの?」て、軽い感じで聞いていたけど・・・藤田さんの言っているのは、そういうのも含まれるのかな。

藤田さんが顔を上げて、私を見る。

「もういいだろ?謝ったよな?俺の事、怖いとか思ってないよな?・・・ちゃんと謝って、誤解を解かないと・・・」

「・・・解かないと?」

「尚の奴、絶交するって。もう、口もきかないとか、言いやがる」

藤田さんは、少し顔を赤くしてプイッと目を逸らした。

「・・・」

“ 絶交 ”とか“ 口もきかない ”とか、小学生じゃあるまいし。言う尚子さんも尚子さんだが、真に受ける藤田さんも藤田さんだ。

目を逸らした藤田さんの顔を見て、尚子さんと、どんな風に話したのかなぁ・・・なんて考えると、妙に笑えてくる。
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