キスの意味
最初は『若年層男子』である宮前さんの事を、できるだけ避けようと思っていた。けれど、噂好きでおしゃべりな宮前さんと話していると、高校の時の『女子トーク』を思い出し、段々苦手意識も薄れてきている。

宮前さんの名誉の為に言っておくが、決して宮前さんが、“ 女子っぽい ” という訳ではない。

「“ クールの藤田、ソフトの塚本 ” なんて言われてて。うちの女子社員は・・・社内だけの話じゃないな。あの2人を知っている女の子達は、すぐにどっち派かなんて盛り上がるんだ」

そう言って、宮前さんは肩を竦めた。

「1人ずつでも目を引くのに、あの2人に並ばれると・・・俺は同じ男として、絶対にあそこには入らないって、速攻決めたね!」

「自分の決断は正しい!」とでもいうように、大きく頷く宮前さん。私も、その気持ちはよくわかる。

からかわれながら、3人で歩いていた時、ものすごく居心地が悪かった。私一人、釣り合っていなかったから・・・

藤田さんや塚本さんと、並んで釣り合うのは、尚子さんや白石さん。ちんちくりんで、たいして可愛くもない私ではない。

「それにしても・・・水野君、度胸があるの?鈍いの?塚本さんだけでなく、藤田さんまで手なずけるとは」
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