キスの意味
息を詰めたまま、藤田さんから目を逸らせないでいた。

「沙映、俺と付き合ってみないか?」

藤田さんの笑顔と瞳に捉えられたまま、私は、息を呑んだ。

なっ、何を言っているの?・・・あっ、そうか。また、からかわれているんだ!もうっ!何か慌てちゃったじゃない!!

「もう、そういうの、やめてください!いくら私の反応がおもしろいからって!」

ようやく藤田さんから視線を逸らし、俯いて言う。

「からかってなんかいない。俺は本気で・・・」

「はいはい!キャー!って、喜べばいいんで・・・」

藤田さんの言葉に被せ気味で言えば、今度は、藤田さんに被せ気味で返される。

「お前も、ごまかすの!?俺は、ちゃんと本気で言っている!水野 沙映、俺と付き合え」

お前、も・・・?その言葉に引っかかりを感じながらも、藤田さんの迫力に黙って見つめてしまう。

真っ直ぐで強い瞳に、またもや捉えられる。

「やっぱり、塚本と付き合ってるのか?それとも、付き合ってはいないけど、好き・・・」

「塚本さんは、関係ありません!」

その言葉は、びっくりするほどすんなり出てきた。
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