キスの意味
「俺は、またお前と会いたいと思った。会った回数じゃない。『また会いたい。もっと知りたい』そう思える相手かどうかなんだ」

黙ってしまった私に、藤田さんが続ける。藤田さんの言葉は、胸に響いた。思わず、納得しそうになる。でも・・・尚子さんの事以外にも、もう一つ、気になった事がある。

「塚本さん・・・」

「ん?」

「藤田さん、塚本さんの事、かなり気にしてますよね?ていうか、もしかしたら大好き・・・」

「急に何を言い出す!?」

明らかにそれまでと表情が変わった藤田さん。慌ててる?焦ってる?私の読み、ビンゴ!?

「塚本さんが私の事を構うから、気になってるだけですよね!?『塚本がからかっている女、俺もからかってみるか』みたいな」

「そっ、それは・・・」

私が、そんな事を言い出すとは思っていなかったのだろう。少し目を見開いたまま、言葉を探している感じだった。そんな表情でも、いい男です、藤田さん。

「勝った!」野球大会の慰労会の時のように、よくわからない勝利宣言を、自分の中でする。
< 296 / 427 >

この作品をシェア

pagetop