キスの意味
藤田さんは、静かに私の話に耳を傾けている。短く息を吐いた後、また話始める。

「その時、突然告白されたそうです。『ずっと好きだった。付き合おう』て・・・」

藤田さんの片方の眉が、ピクッと上がった。

「尚子さん、びっくりしたそうです 。先輩の事、そんな風に見た事もなかったし、まさか仕事中に告白されるなんて！」

藤田さんも、小さく頷いた。

「『そう言ってもらえるのは嬉しいけど、自分はそんな風に先輩を見た事ない。今は仕事中だし、きちんと仕事をしよう』というような事を言ったそうです。先輩なら、そう言えばわかってくれるだろうと・・・」

本当は、尚子さんの口から伝えてほしい。でも、尚子さんと藤田さん・・・２人の想いは、完全にすれ違っているように見えるから。

「先輩の顔色が変わったと思ったら、突き飛ばされて、よろけて、しりもちをついてしまったそうです」

ビクッと、藤田さんの身体が大きく動いた。目を見開いている藤田さんに、私は大きく頷いた。

「たまたまですけど、山根主任が会議室に顔を出して、それ以上の事はされなかったそうです」

藤田さんが、フ～っと大きく息を吐いた。

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