キスの意味
「ここからは、私の想像ですが・・・藤田さんが付き合っていた人と別れたのは、尚子さんが入社した年の夏ぐらいでしたよね?」

「ああ。6月に別れて、7月には社内に広まってたかな」

そう言って、藤田さんは肩を竦めた。

「尚子さんの事を可愛がっている藤田さんが彼女と別れて、その先輩、焦ったんではないでしょうか?」

「えっ!?」

「藤田さんが彼女と別れてフリーになった事で、もし、どちらかがどちらかに想いを寄せていて、告白なんかしたら・・・」

「ちょっと待て!そんな不確かな事で、尚はあんな目にあったのか!?」

藤田さんが、眉間にシワを寄せて言う。

「だから、私の想像ですが!自分の好きな女の子が、藤田さんみたいな・・・性格はともかく、キラキラアイドル顔の“ いい男 ”に可愛がられているんです。内心は、穏やかではなかったはずです。藤田さんがそんな風に可愛がったのは、社内では尚子さんだけでしょう?」

「性格はともかくって・・・まあ、そうだけど・・・」

藤田さんが、眉尻を下げる。
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