キスの意味
「藤田さんに彼女がいたから、安心していたのに、それが別れたと聞いて、早く尚子さんに想いを伝えて、何とかしなければ!そんな風に焦ってしまった。だから、仕事中なのに告白してしまい、尚子さんに拒絶されたと思って、ひどい事を言ってしまった」

藤田さんは、目を見開いたまま言った。

「そうなのか・・・俺のせいなのか・・・?」

私は、小さく首を横に振りながら言った。

「わかりません。ただ・・・」

「ただ?」

「先輩の言った事は、本心ではないと思います。だって、川下部長の姪だとか関係なく、尚子さんは、充分にすてきな人ですから!」

そう言って、私はニッコリ笑った。藤田さんは一瞬、目を閉じた後、薄く笑った。

「そうだな。尚がどんなにいい女かは、俺が一番知っている。沙映、ありがとう。尚に、ちゃんと俺の気持ちを伝える」

「はい!健闘を祈ります!」

いつか尚子さんがしたように、私も右手を額にあて、敬礼のポーズをした。

「あっ!沙映。俺は、あいつの事は嫌いだ」

薄く笑っていた顔を真顔に戻すと、藤田さんは言った。
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