キスの意味
「俺が必死になってやっている事を、あいつはヘラヘラ笑いながらこなしていく・・・それも、ちゃんと結果を残して!」

「・・・ホントにそう思ってます?」

私が、藤田さんの目を真っ直ぐに見て訊けば、チラッとこちらを見た。

「塚本さんが、ヘラヘラ笑っているだけで、成果を上げているって、藤田さんほどの人が、本気で思っている訳、ないですよね?」

確かに、塚本さんのあの穏やかな笑みは、武器になりそうだ。でも、それだけではない。

他の営業さんのフォローがすぐにできるように、自分の担当以外の見積書なんかも、丁寧にチェックしている。

取引先に、一番まめに顔を出すのも、塚本さんだ。

要領のいいやり方ではないと思うけど、塚本さんの誠実な人柄が、よく出ていると思う。

まっ、本当は私なんかがエラそうに言う事ではない。高野主任や丸岡さんに、全部教えてもらった事なんだから・・・

藤田さんは、目を見開いた後、大きく息を吐いた。

「わかってるよ・・・あいつは、いつもいろんな書類や伝票を確認してるから、帰るのはいつも最後だし。取引先にも、よく顔を出してた」
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