キスの意味
「我社でも人気の藤田君に声をかけられたら、西野君も喜ぶよ。ところで・・・一緒にいるのは、彼女かな?いつもお世話になっている藤田君の彼女なら、ぜひ挨拶がしたいな」

おっ、いきなりハッキリ言ってきたな。プライベートだと思うなら、もう少し遠慮した感じの方がいいと思うけど。

「お世話になっているのは、こちらの方ですから、大橋部長!」

思い出した!『大橋部長』。今日聞いたんだ。藤田さんが担当している、大きな取引が決まりそうな会社の人だ!

「そう思うなら、ぜひ紹介してほしいな。実は、声をかける前まで1人の社員と一緒だったんだよ。君の姿を見付けて「あの藤田君が女の子と2人きりで飲んでいる!」と騒ぎながら戻ったからな。女性社員が、代わる代わる覗きに来る事になると思うけど・・・」

うまい・・・藤田さんが、断れないようにもっていってる。私は席を立つと、藤田さん達に近付いた。

「ご挨拶が遅れて、申し訳ございません。本社営業一課アシスタントの 水野沙映 です。いつも、大変お世話になっております」

腰を90度に折ってゆっくり頭を下げた後、頭を上げる。少し目を見開いた藤田さんと目が合った。

「大丈夫!」と伝えるつもりで、藤田さんと大橋部長を見て、ニッコリと笑った。
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