キスの意味
大橋部長と別れて、座っていたテーブルに戻る。

「沙映、悪い!」

藤田さんが、頭を下げる。

「どうして謝るんですか?藤田さんのせいじゃないです!」

「でも、お前を巻き込む・・・」

「頼りないけど、私も一応、藤田さんと同じ社員の一人です。得意先を接待するのは、普通の事ですよね?」

「ありがとう、沙映」

藤田さんは、もう一度頭を下げた。

結局、大橋部長達の宴会に顔を出す事になった。料理が途中なので・・・という事で、少し猶予をもらった。でも、ゆっくり食べて時間稼ぎを、という訳にもいかない。

大橋部長と話している間にも、女の子が2人、ソワソワした感じで覗きにきた。

料理を片付けたら、すぐに行くという事で別れた後、大橋部長が女の子達に声をかけて連れて行った。

あまり遅くなると、あんな風に覗きにくる女の子が、出てくるだろう。

「沙映、気を付けてほしい」そう言って藤田さんは、大橋部長の事を話し始めた。

大橋部長は取引先の創業者一族だが、それだけではなく、きちんと仕事ができる人だそうだ。今回の取引も、最終決定は大橋部長がするそうだ。
< 375 / 427 >

この作品をシェア

pagetop