キスの意味
「大橋部長って、35か6くらいですか?」

「若く見えるけど、先月42才になったんだよ。誕生日のお祝いだって、酒を付き合わされて・・・その時の様子を見る限り、女好きだって事は間違いない」

と言って眉根を寄せた後、大きく息を吐いた藤田さん。

「沙映、ほんとに・・・」

「たぶん、大丈夫です!おまかせください!」

左手でトン!と胸を叩き笑った私を、藤田さんは不安そうに見つめた。


─個室が並んだ奥に、大橋部長達がいる広い座敷があった。

20人くらいが集まっていた中に、藤田さんと2人で入っていくと、拍手で迎えられてしまった。

一応、自己紹介のような挨拶をして、寿退社をされる西野さんに、お祝いを言う。

そうしているうちに、藤田さんは女の子達に引っ張っていかれ、私は大橋部長の隣に座っている。

仕事やプライベートな事を、嫌味がない程度に話し、大橋部長が飲んでいる赤ワインを、時折グラスに注ぐ。

ここまで話して思ったのは、大橋部長は、いろいろと『うまい』という事。

自然に話題を提供してくれるし、大人の余裕を感じさせる返しをしてくる。

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