キスの意味

塚本さんの顔も、赤く染まっていたに違いない。

自分の軽自動車に乗り込み、エンジンをかけ車を発進させる。

いつも私を見送ってから、塚本さんは車を動かす。

身体の中の熱を逃がすように、はぁ~と大きく息を吐いた。

久しぶりの、キスだった……

触れただけのキスなのに、身体の熱はなかなか引きそうにない。そしてそれは、心もポッと温めてくれた。



*****



あの別れ間際のキス以来『さよならのキス』は、私たちのお約束となった。

キスした後は、恥ずかしいし照れくさいけど、ちゃんと塚本さんの顔を見て「おやすみ。またね」と言えるようにはなった。

私は、ちょっと……いや、かなり期待していた。心も身体も、二人の距離がぐっと近付く事を。

……だが、“そこまで”なのだ。『さよならのキス』止まり。

こんな風に言うのは恥ずかしいけど。そのキスも、唇を重ねるだけのもの。……そっ、その、それ以上深く…と言うか、“大人のキス”になる事はない。

私が酔っ払っていて初めてされたキスの方が、ずっとエロかったと思う。
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