キスの意味
生ビールから焼酎ロックに移行した頃、私は頬杖をついて、深い溜め息を吐いた。

「なんで私が“営業アシスタント”なんだろ・・・」

「おじさん、沙映の事お気に入りだから」

私の顔を覗きこみながら、尚子さんが言う。

ん?・・・おじさん?・・・

ちょっと辛口な尚子さんが、普段使う『おじさん』や『おやじ』とは違うニュアンスを、そこに感じた。

「・・・おじさん?」

頬杖をついていた手から顔を上げ、尚子さんを見つめる。

尚子さんは視線をそらし、焼酎ロックを一口飲む。

短く溜め息を吐いた後、困ったように眉尻を下げる。

「沙映には、いつか話すつもりだったから、いっか・・・そう、『伯父さん』。川下部長は、私の母親のお兄さん!」

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