私とメガネくんの秘密のレッスン
side 白石潤
林檎のように
真っ赤に染まった女の子が
走り去っていく。
あぁ、本当に止まんない。
こうなると
とことんいじめたくなってしまう。
「………潤、
甘過ぎデスケド。」
「…ん、
なんとでもどうぞ。」
そんな俺に呆れたように見る
親友の隼人は
「だけど本当に
彩乃ちゃんのこと好きなんだね。」
嬉しそうに微笑んだ。
「でもさ、
彩乃ちゃん俺と潤とじゃ
態度が全く違うね~。」
「…そうか?
俺とレッスンしてるから
隼人より
親しみやすいだけじゃねぇか?」
「ううん、
そうじゃないのよ。
そんなんじゃないのよ。」
隼人は難しい顔をして腕を組んだ。
まぁ確かにクラスの
女子は隼人のまえではしおらしくなる。
だけどそれでも動じないのが
鈴村さんとその友達の沢村さん。
この二人は結構人気がある(らしい)のに
異性に興味がなさそうだから
隼人もそれには気が付いてる。
それどころか沢村さんが
全くなびいてくれないから
ショックを受けてることは間違いないだろう。
「…ん~。
鈴村さん、
結構鈍感子ちゃん?」
「…あぁ、
鈍感。超鈍感。」
スーパーウルトラ鈍感な女だ。
だから俺も手を焼いてる最中だ。
するとにんまりと嫌な笑みを作った隼人は
「フフフフ~
隼人の恋路も甘くないのね~!」
「むしろ難関だ。」
面白そうにクスクス笑い出す。
…本当に嫌なやつだ。
だから
「…っそういうお前だって
難関コースだろうが。」
「う"っ…
酷いこと言いますね~!」
「…おあいこだ。」
あえて意地の悪いことを言い返す。
これが俺らの関係だ。
「……まぁ、
お互いに頑張ろうね~。」
「俺はお前の恋路は
どうだっていいけどな。」
「ひっ、ひどい!
さてはさっきの彩乃ちゃんとのこと
根に持ってるな?!」
「ったりめーだ。
馴れ馴れしく触りやがって。」
「いいじゃん!
それにまだ潤のものじゃないじゃん!」
「きったねぇ手で触りやがって。
本来ならあいつのことアルコールで
除菌したいほどだった。」
「ひっ、ひどい!
まるでバイ菌扱い!」
「バイ菌で済めばいいな。」
「鬼!」
俺は落ち込む隼人を放っておいて
先に教室に戻るべくして足を動かした。
ただでさえ昼休み削られたって言うのに
こいつといるとさらに削られる。
「ひどい!
放置ですか!」
そもそも鈴村さんならまだしも
こんなやつに削られるなんて
うざったいどころではない。
「無視ですか!」
こんなやつが
親友だなんて本当に終わってる。
そもそも兄貴もこいつの姉貴と付き合うから
こう付きまとわれるんだ。
「まるごと無視ですか!」
つうか今さらだが
鈴村さんにこいつが親友ってバレた。
うわ、イメージ悪くなったかも。
もしそうだとしたらーー…
「ふんだ!
もう潤なんかしーらない!」
「…やっぱりお前
地獄におちろ。」
「えぇぇぇえぇ?!
やっと口を開いたと思いきや
暴言ですか!!」
こいつのことは地にはてまで
追い掛けてやる。
side 白石潤 end