私とメガネくんの秘密のレッスン


「ハアァァ……」



白石くんから逃げるように
教室まで全速力で走った私はーー…



「…づがれ"だ…………」



机に倒れこむように項垂れた。
元々運動も得意じゃないところに
正体不明なドキドキに追い詰められ、
さらに疲れた。

本当に近頃の私は変だ…



「あらあら、
 だいぶお疲れね。
 
 どうしたの?」



「琴乃…」



すると私の目の前に女神様かと
疑ってしまうほどに美しい琴乃登場。

うん、
午後も一段と輝いてるぜ!



「もう…
 正体不明なものに
 殺されそうなんです。」



「なんそれ。
 悪い夢でも見たの?」



琴乃は心底呆れた目付きを私に送る。
私は真剣に悩んでるのにぃ!



「琴乃…
 私の扱い雑すぎ!」



「っるさいわね~。
 仕方ないじゃない。
 最近彩乃だって隠し事してるじゃない。」



「う"っ…」



隠し事って…
レッスンの先生が白石くんってことだよね?

ううぅ…
本当に琴乃は勘が鋭いんだから…

だけど白石くんには秘密って言われてるし
言ったところで琴乃、
絶対白石くんに奇襲かけそうだし…


うん、
絶対言えない!



「~~~!」



ごめん、琴乃!



「………まぁいいわ。
 だけどなにか困ってそうだから
 話は聞いてあげる。」



「本当に?!」



「えぇ、
 私優しいから。」



え、
自分で自分を優しいって言っちゃう?
まぁ琴乃らしいけど。

それに猫の手ならぬ、
琴乃の手も借りたいほどなんです!



「私……
 心臓がおかしいかもしんない。」



「ハァ…
 恋でもしたわけ?」



「こっ、こいぃ?!」



い、今"こい"って言った?!



「えっ?
 泳ぐ"鯉"じゃなくて
 シンデレラと王子様の"恋"?!」



「…どうして例えがそこなの。
 まぁいいけど。


 そうよ、
 シンデレラと王子様の"恋"って意味」



「私が?!」




いやいや、
ありえない!

そもそも私…



「今まで恋なんてしたことないよ!」



「あらあら、
 貴重な存在ね。

 いるのね、今時。」



あ、今馬鹿にしたな。



「え…私が……?」



だけど今は失礼きわまりない琴乃を
責め立てることもできない。
それぐらい私は思考が働いていない。


……私が………恋?




「…まぁいいわ。
 じゃあ心臓がおかしいって思うときは
 どんなときなわけ?」



ど、どんなとき?
それは…



「と、
 "特定の人物"と居るとき。」



「ふんふん。
 (特定…ね。誰かしら。)」



「一緒に居て会話したりすると
 楽しいし、嬉しくなるの。」



「ふんふん。
 (この子に転機があったとしたら…
 いつかしら。)」



「だけど冷たくされたり
 素っ気なくされると悲しい。」



「ふんふん。
 (この子の転機と言えば…
 家庭教師が来てからかしら。)」



「それに正体不明なドキドキ感と
 胸の締め付け、あと熱が上がる等の
 症状が現れ、
 臓器の異状事態に苦しめられてるの…」



「ふんふん。
 (ってそれ…)」




本当に私のなかで
なにが起こってるんだろう。

それも白石くんにだけだし…
私…死んじゃうのかなぁ…




「ねぇ、
 それってまさか"家庭教師"限定に
 現れる症状なわけ?」



「え"っ…!」



家庭教師限定?!
も、もうバレてる?!


……だ
だけどその先生が白石くんって
バレたわけじゃないし…

まだ…まだバレてない。
大丈夫、大丈夫。



「う…うん……」



「ふーん。」



琴乃は腕を組んで考えるように
黙りこんだ。

真剣に考えてくれてるみたいだけど
バレてないかが心配なところ。



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