闇に光あれ。〜愛されなかった総長。愛する偽りの心を持った黒猫。〜
「なーに、食い意地張ってるんだよ。」
騙されたことに頬を膨らませてキッと睨んでくる。
「早く食べるぞ。」
いつもより遅くなった朝食を光希はもりもりと食べる。
ほっぺがパンパンのなるまで押し込んで美味しそうに食べてくれる光希。
自分が作った料理をこんなに美味しそうに食べてくれる奴が居るって、なんかいいな。
はじめての感情で少しだけ戸惑った。
なんせ、笑うと言うことも理解しがたい人間だからな。俺は。
『何を難しい顔をしている?』
口の隅にフレンチトーストのクリームが付いている。
「ここ。クリームついてるぞ」
俺は俺自身の口の隅を指で叩きながら言う。
『ここか?』
手で拭う仕草が妙に子供っぽい。
しかも、俺が指した方と真反対。
俺は、鏡を見たときのようにクリームが付いた方を指差したのだが。
「違うこっちだ。」
独り暮らしには向いてないほど大きいダイニングテーブルから身を乗り出すように、向かいに座る光希との距離を縮めた。